共同オフィス問題(東京芸大誘致に伴う実験事業の中止)について、WNSの方針を報告します。
? WNSの現在
平成16年5月31日、横浜市長の記者会見で「市民活動共同オフィス(歴史的建造物である旧富士銀ビルに設置されていた)における3年間の実験と検証事業」が突如中止になり、平成16年4月より東京芸術大学が映像研究科を新設し、「旧富士銀ビル」に入居することになったとの発表がありました。オフィス入居団体の申し立てで共同オフィスは別の場所に移転すると横浜市は回答してきました。しかしながら新オフィス設置まで半年間のブランクがある関係で、ある団体は自力で事務所を開設し、またある団体は事務所がないまま活動しています。WNSは平成16年10月9日付で公開のオフィスがなくなりました。現在、WNSは本拠地の住所を横浜市内の会員宅に置いています。個人の自宅ですので、プライバシーと安全の確保のため、住所地は非公開として活動しています。
? 横浜市のその後の対応について
横浜市長は記者会見で、「代替施設としてもっと良いところを考えているので、心配しないで欲しい」(東京新聞・平成16年6月1日付)と表明され、WNSは推移を見守ってきました。その後、代替施設は桜木町駅のクリーンセンタービルになったと発表されました.。馬車道の旧富士銀ビルの旧オフィスと比べてどこが、「もっとよいところ」なのか、比較考量してみましたが、実際には「もっと不便なところ」に追いやられたというのが、実感です。馬車道はみなとみらい線も開通し、交通便利でにぎやかなところです。桜木町の新オフィスは駅から歩いても遠く、人の往来のまばらな不便なところにあります。旧オフィスはDV被害者の相談者やスタッフが来所するのに、とても便利で、多くの市民にとっても有用な場所でした。市長の「もっとよいところ」との発表でしたが、残念ながら、WNSにとっては、「もっとよいところ」ではありませんでした。
いくら横浜市が「協働元年」と言葉で飾っても、芸大には一等地にある横浜市所有の歴史的建造物を膨大な市民の税金で改修、無償で提供しながら、NPOや市民活動は交通不便な市民の集まりにくいビルの一角に押しやる……この事実から判断して、市民を軽んじている、低く見ているとしか理解できません。まさに、草の根活動は巨象のような行政に草のように踏みにじられているようなもので、残念でなりません。
? なぜ歴史的建造物が市民活動にふさわしいのか
レトロ・アンティーク・アート……は人の心を和ませる不思議な力を持っています。建物自体が人の温もり、生活を感じさせるからでしょう。旧富士銀ビルは多くの市民に愛され、70年以上の時を刻み、ついに横浜市民のものになりました。そしていかに市の財産を市民のために活用すべきか?という大きなテーマをもって、実験事業が始まったわけです。実際、市民活動共同オフィス設立の際、横浜市長は補正予算案で、モデル事業として提案し、「民活」と「歴史的建造物の利用」を訴え、さらに市民や企業との連携を打ち出し、市民団体の活動場所として幾つかの候補地の中からここでやることに意味があると歴史的建造物にこだわったと新聞にも報道されていました。(東京新聞・平成14年5月22日付)WNSもこの「横浜らしい」取り組みに大いに共鳴して応募したわけです。
WNSの活動の大きなテーマは「心のいやし」です。このテーマの解決と実践活動を追求するのに歴史的建造物はふさわしいステージでした。WNSに来られる相談者や会員の皆さんからも居心地がよいと好評でした。歴史的建造物を活用した市民活動はまさに横浜らしいプロジェクトだったと思います。この歴史的建造物には市民が集い、活動するためのすばらしい空間がありました。
事実、歴史的建造物が市民活動にいかにふさわしいかについて、グリーンマップ横浜の代表はこのようにコメントしておられます。「都市の資源を活用する《リノベーション》の方法は都市創造の新しい方法であり、高層建築を開発するといった従来型の都市計画より有効である。同じ意味で、行政や外部の人材ではなく、すでに根付いている人的なリソースをまちづくりに活かす《協働》の概念ともぴったり一致する。」市民活動に関係する市民の皆さんにインタビューしても、「歴史的建造物は市民生活の向上と充実のために市民が利用できる場所にすべきではないか」という声が圧倒的でした。この場所を一つの大学だけが占有し、市民は排除されるのかと思うと大変残念です。横浜市から見れば豪華客船(芸大)が来航するので、ボート(市民・市民団体)などは必要ない、どこかの川の隅にいれば十分だと判断したのだと例えることができるでしょう。いつの時代もボート(市民)はちょっと嵐がくれば沈んでいくはかない存在で、弱者の声は海の藻屑のように消えていく……本当に悲しいことです。
? WNSの結論
横浜市が開設するクリーンセンタービルではWNSのテーマ「心のいやし」を追求することはできないと結論し、今回は応募しないことに決定しました。そのようなわけで今後、横浜らしい地域福祉の実現、市民活動の実践にふさわしい建物に入居できるまでは、現状の運営体制で維持してゆくことになりました。それに伴い、電話相談は東京の番号で行うことになります。横浜市内の相談者のみなさまには当分の間、大変ご不便をおかけしますが、上記の事情をご理解ください。WNSは今後もDV被害者支援における団体のミッションを果たすべく努力してゆく決意です。どうぞこれからも引き続き、皆様のご支援・ご協力を心からお願い申上げます。



